一度発症すると再発が多い尿路結石症は、尿を作る腎臓から、尿を出す尿道までの間(腎臓、尿菅、膀胱、尿道)で結石が出来てしまう病気です。

結石ができる場所は膀胱が圧倒的に多く、何度もトイレに行ったり、不適切な場所でおしっこしてしまったり、場合によっては血尿が出たり、トイレに入ってもごく少量の尿しか出なかったりすることで、飼い主さんが気づきます。

重症になると、尿道に結石が詰まって尿が出なくなってしまい、痛みから殺気立ったようになって、攻撃的になることさえあります。尿が全く出ない場合には、急性腎不全を起こして全身に毒素が回り、死に直結する程の緊急事態ですから、すぐに病院に連絡して処置の手配をしてもらわなければなりません。

猫の尿路結石症の種類

膀胱に出来る結石の殆どは以下の2つです。

・リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト):3歳〜5歳の若い猫ちゃんに多い。
・シュウ酸カルシウム:7歳〜10歳の中年期以降の猫ちゃんに多い。

また、腎臓にできるものは殆どがシュウ酸カルシウムと言われています。その他にも症例は少ないですが尿酸塩なども見られることがあります。

猫の尿路結石症になりやすい原因

猫の尿路結石症の原因はいくつか考えられます。まず、結石が形成される条件は、尿が過飽和状態になってしまうことで、その状況を誘発する原因とされる主なものは以下の通りです。

①フード:ナトリウム、カルシウム、などの成分のバランスが悪いと、結石が形成されるやすい。(後に詳しく述べます)

②生活環境のストレス:分離不安でトイレを我慢したがる猫ちゃんや、多頭飼いをしているとストレスを感じて、神経質な猫ちゃんは結石を作りやすい。

③飲水量の低下:冬や春先の寒い時期には、お水をあまり飲まないことで、尿量が減る為、過飽和状態の尿(濃い尿)が出来上がり、結石が出来やすい。

④感染症:細菌感染などによる膀胱炎が潜在的に存在していると、膀胱壁の細胞が炎症によって剥がれ落ちて塊を作り、結石が形成されるきっかけとなる可能性がある。また、中には尿のpHをアルカリ性にしてしまい、アルカリ性で出来やすいストルバイト形成の原因になる細菌類も見られる。

結石が出来るだけではなく、その大きさによっては尿道に詰まる場合があります。その可能性が高くなる原因は、

①性別:解剖学的に尿道が狭く曲がっているオスに多い。

②肥満:肥満していると脂肪が尿道を狭くする為、結石が詰まりやすくなる。

と言われています。

猫の尿路結石症の治療

尿路結石症と診断されても、尿が少しでも出ている場合には、血尿の原因である炎症を取り除く消炎剤や二次感染を防ぐ抗生物質を使用したり、尿量を増やすために皮下点滴を行ったりします。また、結石を形成する原因にフードの関与が考えらる為、食餌療法を行います。獣医師に処方された療法食以外は食べてはいけません。この病気の一番の問題は、療法食を食べないと再発する恐れがあるということです。

結石が尿道に詰まって(閉塞して)しまった場合には、カテーテル(チューブ)を尿道から入れて詰まりを解除してあげますが、命に関わる緊急事態となっている為、場合によっては亡くなってしまう猫ちゃんもいます。

猫の尿路結石症とフードの関係

猫ちゃんの尿路結石症で食事療法を行う目的は、次の3つのポイントから成ります。

・尿に結石の原因となる物質をなるべく排出しないようにする。
・尿の状態を結石が出来にくいpHに安定させる。
・尿の量を増やして、過飽和状態にさせない(薄くする)。

これらを踏まえて、以前は尿がアルカリで出来るストルバイト結石が非常に多く見られた為、キャットフードは尿が酸化するように作られていました。また、ストルバイト結石を防ぐ為にナトリウムやカリウムの量を抑えて作られていた為、両方の条件から、シュウ酸カルシウム結石が増えて来ました。現在は、主にストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の再発を管理する為に、以下のことが調整されているフードが多いです。

①フード中のナトリウム
フードから摂取するナトリウムがカルシウムの排出に大きく貢献し、腎臓や血圧には影響しないことが示されており、尿量も増えることから、フード中のナトリウム量が多めに調整されている。

②フード中のマグネシウム
酸化マグネシウム量がアルカリ尿を生成しやすくして、アルカリ尿で形成しやすいストルバイト結石形成を促すと言われており、適切量に調整されている。

③フード中のリン
リンがフード中に多いと明らかに尿中にリンの排泄が増えて、尿中のマグネシウムとアンモニウム、リン酸塩の過飽和状態が出来上がってしまう。その結果、ストルバイト結石ができやすくなる為、適切量に調整されている。

④フード中のカルシウム
カルシウムの過剰摂取、ビタミンDの過剰摂取、リンの不足、などは腸管からカルシウムを多量に吸収して、結果的に腎臓から尿へのカルシウム排泄が増える為、シュウ酸カルシウム結石の形成を誘発する為、適切量に調整されている。

猫の尿路結石症と療法食

尿路結石の治療に使われる療法食の例を紹介します。

ヒルズ

 

s/d(ドライ、ウェット) : ストルバイト結石を溶解する為のフードで、ストルバイト結石と診断された最初に食べるフードです。

c/d マルチケア(ドライ、ウェット):ドライはフィッシュとチキンの2種類のフレーバー、ウェットは粗挽きシーフード、シチュータイプのツナと野菜入り、チキンと野菜入り、といった種類が豊富で、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の両方の再発防止・維持食として食べるフードです。種類の多さから、猫ちゃんが飽きないように工夫されていることが伺われます。

c/d マルチケア・コンフォート(ドライ、ウェット):ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の再発予防・維持食であり、L-トリプトファン、加水分解ミルクプロテインを含んでいることから、神経質な猫ちゃんの精神的なストレスを減らすことが期待できるフードです。

ロイヤルカナン

pHコントロール0(ドライ):ストルバイト溶解を主な目的に使用するフードです。

pHコントロール1、2(ドライ、フィッシュテイスト):ストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石の再発予防・維持食として使用するフードです。

pHコントロール・オルファクトリー(ドライ):ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結成の再発予防・維持食で、特に嗜好性を求めた製品で、カロリー密度を控え目に設定しています。

pHコントロール・ライト(ドライ):pHコントロール1よりもややカロリー密度を低くしており、肥満傾向の猫ちゃん用になっています。

pHコントロール(パウチ、フィッシュテイスト):ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結成の再発予防・維持食で、ウェットタイプは水分が多い為、尿量を増やすことができます。

エランコ

ストルバイト・スターター(ドライ):目標尿pH6.1以下で、ストルバイト結石溶解を目的に食べるフードです。

ストルバイトケア(フィッシュ、チキン、ライト):ストルバイト・スターターよりも少し高めに尿pHが設定されており、ストルバイト結石再発予防・維持のフードです。ライトは肥満傾向の猫ちゃん用になります。

猫の尿路結石症に関する注意

猫ちゃんの尿路結石症は非常によく見られる病気である為、普段から食べるフードに関しては、原材料がどうあれ、尿路結石予防の製品であるか、マグネシウム、リン、カルシウムの割合がどうであるか、といったことを確認して、獣医師にもアドバイスをもらいましょう。

また、治療の為の療法食の種類は沢山出ていますが、猫ちゃんによっては食べてくれないことが多く、ついつい、食べたい物を与えたくなると思います。

どうしても食べてくれない場合には、手作りフードを試すことも可能ですが、自己責任の部分もありますので、かかりつけ獣医師とじっくり検討して下さい。

*筆者rihomeopath略歴*

東京出身、獣医師、医学博士、ニューヨークで人と動物のホメオパシーを4年間学び、日本では小動物臨床を10年ほど経験。馬と牛の多いノルマンディーで、フランス人夫と田舎暮らし中。